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Posted by おてもやん at

2010年10月31日

この百年間の日本語の本の中で最も美しい本

 ジュンク堂書店には本が読めるスペースがありますので、「買うか買うまいか」迷う時はいいですね。しかし、逆の場合もあります。買おうとする直前の本を読んで、もう一冊別の本が欲しくなることもあります。
 まさに金子光晴『マレー蘭印紀行』中公文庫が「もう一冊」でした。金子詩集『女たちへのいたみうた』の表紙を隠しながら、解説のところを読んでいたら、こんな文章がありました。

 この文庫版の選詩集を読み、金子光晴という詩人に興味をおぼえたら、その人の書いた詩をもっと読んでください。・・・もし、この文庫を手にとり、いままさにこの解説を読み、レジに持っていこうとしているなら(解説を読んで元の本棚に戻しちゃいけません。そんなことをしたら、あなたはこれから生涯であなたが得ることになっているはずの恋人を最低ふたりはなくしてしまうでしょう。そのことは、わたしが保証します!)、どこかの棚にあるであろうその人の他の文庫本も捜して、ついでに持っていってください(恋人がひとりはふえます。それも「ねるとん」より確実で、しかも質の高い恋人が)。何冊も一度に買えないというなら、まず『マレー蘭印紀行』からはじめてください。この本の中の日本語は、この百年間発表されたすべての本の中でもっとも美しい。日本的な因襲のすべてに、生涯にわたって反抗しつづけたその人が書いた日本語こそ、だれのどんな日本語より美しかったのです。

 ということで、まんまと『マレー蘭印紀行』を買うことになりました。
  


Posted by わくわくなひと at 19:27Comments(0)

2010年10月31日

金子光晴詩集『女たちへのいたみうた』集英社文庫

 詩人の茨木のり子さんのエッセー集を読んで、「どんな人だろう」と俄然興味が湧いてきた人の詩集です。金子光晴詩集『女たちへのいたみうた』集英社文庫。
 金子さんは、茨木さんが、こんな風に書いていた人です。

 さまざまな女性体験も永い間に醸成されて、美酒のごときものに変じ、老いてなお、知的で繊細な男の色気を失ってはいなかった。対座すると、ひどく安らかでくつろげるのである。
 飄々とした雰囲気は、すでに女に関する<免許皆伝>かとも思われ、さらに言えば、男女の別さえ突き抜けていた。本来、人と人とは対等であるということが、これほど血肉化され、体現できている男性が日本にも居た!というこころよい驚き。


 文庫本の表紙も色っぽ過ぎて、表紙が見えないように裏返しにしてレジに持っていきました。
 少し読みました。何ものにも臆しない人(女性は少し怖いと思っている)の詩と文章です。
 いろんなしがらみから自分の頭を解放し、創造の世界に入っていくときに重宝する本ではないかと思いました。

 
  


Posted by わくわくなひと at 19:07Comments(0)

2010年10月31日

老年期の人たちの心理と行動を描く。伊藤整『変容』

 昨日に続いて、今日もジュンク堂書店に行きました。
 途中、天神西通りで旧知のバード稲原さんに会いました。今日も街頭を歩く美少女の写真を撮っていました。「天神から丸善がなくなって困ったもんだ」と、そんな話をしてジュンク堂に行きました。
 今日は多少お堅いイメージのある岩波文庫から、伊藤整の『変容』を買いました。一年くらい前に、ある程度齢を重ねた時に読んだらいい本と紹介されていたものです。

汽車の窓の左側に小さく、市街の家並から抜け出て、壁の白い天守閣が見えた。・・・二年ほどかかった修理もすでに完了し、二重の入母屋作りの破風を見せて、典雅な形でこの町の上にそびえている。・・・

 この文章から始まる小説です。無駄のない大人の男性の文章のリズムが何とも心地よい感じです。

 老年期に入ろうとする主人公たちが展開する心理や行動は、性の快楽が青年の特権ではないこと、さらには、それらの行為を通して人生の真実により深く到達するのは、若者や壮年よりも老年であることを啓示する。

 哲学者の中村真一郎さんが書いてあります。暇見つけて、こっそり読み終えたいと思います。
  


Posted by わくわくなひと at 18:50Comments(0)