2010年12月03日
書くより書かないことの大切が伝わる大人の小説「切羽へ」

帯には「直木賞受賞作!」「どうしようもなく別の男に惹かれていく、夫を深く愛しながらも。」「繊細で官能的な大人の恋愛小説。」と書いてあった。
「明け方、夫に抱かれた。」から始まる。
このところ女性作家を続けて読んできたため、「あ!また・・・」と思い、しばらく読むのを抑えていた。
男性では書けないような官能小説だと思ったら、そうではなかった。“官能”をどうとらえるかだが、いわゆるエロではない。書きすぎていない。女性の揺れていく所作を繊細に描いた気品ある大人の小説だと思った。“抱かれた”という言葉を最初に読まされていたので、最後まで読んだところで、ずぅっと、“抱かれた”に引きずりこまれていた自分に気づいた。
山田詠美は「解説」でこう書いている。
「恋に落ちる時のめくるめくような思いは描かれない。その代わりに、二人の通じ合う際の何気ない所作が丹精を凝らして選び抜かれる。性よりも性的な、男と女のやり取り。・・・全編に渡って、書くより書かないことの大切さが伝わって来る。それは、行間を読ませるというような短絡的な技巧とは違う。井上荒野さんは、書いた言葉によって、書かない部分をより豊穣な言葉で埋め尽くす才能に長けた人だ。」
文章は小池真理子が好み。物語や登場人物は井上荒野がいい。ゆっくり話せる機会があるなら、井上さんと過ごしたいと思った。
全編にわたり北部九州弁の会話が繰り広げられる。たぶん長崎か?

Posted by わくわくなひと at
20:36
│Comments(4)
2010年12月03日
鹿児島はすでに近い!新幹線全通すればもっと近くに

昨日の長崎往復では、井上荒野さんの直木賞受賞作「切羽へ」をほとんど読んでしまいました。今日も、荒野+もう一冊は読めるかと思いましたが、本当、熊本からは鹿児島は近いですね。
上熊本駅から在来線の「リレーつばめ」に乗り、新八代駅で新幹線の「つばめ」に乗り換え。この間、1時間ちょっと。博多より近いじゃないですか。
熊本市より南は久々でした。途中、富合町では「JR WEST」の文字が入った新幹線「さくら」がたくさん並んでいました。景色も珍しく、本を読むより車窓から見える風景に関心が向かいました。新八代からの新幹線はトンネルばっかりで、「切羽」の最後の部分を読み終えることができましたが、あっと言う間ですね。
鹿児島中央駅に着くと、さっそく抑揚のある癒し系の鹿児島弁がたくさん聞こえてきます。私の場合は筑肥弁系列のアクセントですので、さぞ鹿児島の人にはぶっきらぼうに聞こえることだろうと思いました。ただし、顔は南九州風だと周りから言われていますので、黙っていれば街中に溶け込めるに違いないと思いました。
市電に乗って目的地に行きました。車中で癒し系のイントネーションを聞いていると、ここには悪い人や危険な人がいないような気分になってきました。ゆったりとした雰囲気が漂っています。運賃は160円均一。熊本市電は150円均一。長崎の路面電車は120円均一・・・。
早々に用事は済ませ、再び鹿児島中央駅に戻ると、あの話題を呼んだ熊本駅では見られない「西郷どんカウントダウンボード」を見つけました。その後、帰りの「つばめ」に乗ってすぐ、隣のホームに試運転中の700系「さくら」が入ってきました。
新幹線開通まで後98日ですが、熊本からだと鹿児島はすでに近い。しかし、今のところ交流が少ないようですので心理的な距離は遠い感じです。その分、物珍しく好奇心をそこそこ充たすことができました。

Posted by わくわくなひと at
17:15
│Comments(0)