2011年01月10日
【読書一年間の回顧】・・・美しものへの憧れ

一年間のブログをパラッパラッとめくり読みしました。ブログに書き込んだのは、何らかのインスピレーションを得たものばかりです。読んでも「特に!」と思わないものは書き込んでいません。
早足で一年分のブログに目を通して気づいたのは、自らの関心領域が読書という行動を通して浮かび上がってきたことでした。単なる思いではなく行動である点が、私の潜在意識を探索する手がかりになっていくような気がしています。
自分は何が好きなのか、何に関心があるのか。このことを整理することが、今後の生き方や生業である経営ビジョンを作成していく上でも大いに役に立ちそうな予感がしています。
振り返りの結果は、大きく分けると、以下の通りです。
①美しきものに憧れていること
②過去の歴史の中から、昔の人々の人生への思いを拾おうとしていること
③ひらめき、わかる、創造という、何かが生み出される瞬間やメカニズムを知ろうとしていること
④世の中の大きな動きをとらえ、自らが行動していくための指針を得ようとしていること
つまり、真実とは何か、良いこととは何か、美に動かされるとはどういうことか-を私の脳は探索しているようです。昔、大学で習った“真・善・美の探求”そのものであったことに改めて気づきました。人の欲求は昔の人と変わらないということです。
①美しいものへの憧れ
■森沢昭夫『津軽百年』
・すきま風がすうっと忍び込んできて、哲夫の首筋をなでる。
■長谷日出雄『「阿修羅像」の真実』
・阿修羅を見て青年期に経験した感情が蘇る。
■中村明『名文』
・美しい文章に感動することは「ある人がある意図を持ってある形でおこなった表現によって、別のある人が刺激を受け、そこに積極的に参加する過程で起こる精神上の変化の総体」。
■幸田文『おとうと』
・ときどき川のほうから微かに風を吹き上げてくるので、雨と葉っぱは煽られて斜めになるが、すぐまたまっすぐになる。
■森沢昭夫『海を抱いたビー玉』
・美しい情景描写
■永井荷風『雨蕭蕭』
・秋の日のどんよりと曇って風もなく雨にもならず暮れて行くようにわたしの一生は終わって行くのであろうというような事をいわれもなく感じたまでの事である
■小川糸『食堂かたつむり』
・無花果の葉っぱのすき間から降り注ぐ光が、小川の底で舞い散っていた。
■宮本輝の芥川賞選評“行間のない文学”
・自分にとって決定的に足りない何かがいったい何であるかについて、結局は、自分で考え抜いて掴んだものしか現場では役に立たないのだ。
■ヘッセ『知と愛』
・この美しい感動的な娘の像を作り、その顔に、態度に、両手に、恋する男のあらゆる重愛と賛嘆とあこがれを封じこめたのであった。
■柳宗悦『手仕事の日本』
・手はただ動くのではなく、いつも奥に心が控えていて、これがものを創らせたり、働きに喜びを与えたり、また道徳を守らせるのであります。そうしてこれこそは品物に美しい性質を与える原因であると思われます。それ故手仕事は一面に心の仕事だと申してもよいでありましょう。
■村上龍「冬の花火」
・花火は一瞬で消えるが、ぼくたちに一体感のようなものを刻みつける。ぼくたちは、誰かとともに花火を見ることで、その人と同じ感情を共有していることに気づく。
■宮本輝『螢川』
・蛍の大群は、滝壺の底に寂寞と舞う微生物の屍のように、はかりしれない沈黙と死臭を孕んで光の澱と化し、天空へ天空へと光彩をぼかしながら冷たい火の粉状になって舞いあがっていた。
■藤原公任『和漢朗詠集』
・あさみどり 春たつ空に うぐいすの はつこゑまたぬ 人はあらじな
・おもひかね 妹がりゆけば 冬の夜の 川風寒み 千鳥なくなり
・燭を背けては 共に憐れむ深夜の月 花を踏んでは 同じく惜しむ少年の春
■金子光晴『女たちへのいたみうた』
・恋人よ。たうとう僕は あなたのうんこになりました。
・君の恋人になりたいな。だめなら僕は せめて、石鹸になりたいよ。・・・蛞蝓のようなものをつかんで、君はおどろきの叫びをあげる。『なんてこの人小さくなったんだろう』
■唯川恵『とける、とろける』
・私が、「私」のまま、どこまで行けるのか。それはすべての現代女性が抱える、病と課題でもあるから。
■伊藤整『変容』
・生きることの濃い味わいは、秘しかくすことから最も強くにじみ出て来ることを私は知っている。自分のした事を自然現象と同じように寛大に許しながら、もの静かに落ち着いてその場面から立ちのくことに、私は人間の熟成というものを感じる。
■小池真理子『玉虫と十一の掌篇小説』
・自分がどこにいるのか、何をしようとしているのか、どこから来たのか、どこに向かっているのか、本当にわからなくなる。そのくせ、女は空っぽになった自身の肉体の中で、時間がごうごうと音をたてて渦を巻き始めるのを感じる。時間の渦は、巨大な排水口の奥に一挙に吸い込まれる水のようになって、女を呑み込む。暗がりの奥へ奥へと引きずりこんでいく。
■井上荒野『切羽へ』
・明け方、夫に抱かれた。
■泉鏡花『高野聖』
・婦人は何時かもう米を精げ果てて、衣紋の乱れた、乳の端もほの見ゆる、膨らかな胸を反らして立った。鼻高く口を結んで目を恍惚と上を向いて頂きを仰いだが、月はなお反腹のその累々たる巌を照らすばかり。
Posted by わくわくなひと at
21:59
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