2012年02月04日
『秘密』小池真理子対談集
1年半くらい前に引き続き、小池真理子ブームが再来した。世の中のブームは知らないが、個人的なブームの再来だ。
文庫本の短編集を2冊読み、今度は『秘密 小池真理子対談集』講談社文庫(2009年12月15日第1刷)を読んだ。短編は短い時間、ちょっと空いた時間や寝る前、移動中などに読めるのがいい。この人の小説は、瞬間で文章の世界に入っていける。そして、ふと思った。「この人はどんな人なんだろう?」。
『秘密』の「はじめに」に、こんなことが書いてある。
「男と女の出会い同様、対談においても出会いの不思議がある、と私は思っている。
使う言葉、心の襞、見つめているもの、通りすぎてきたもの・・・そうしたものが、初対面で、ろくに相手のことなど知らずにきたにもかかわらず、不思議とぴたりと一致する。話しが尽きなくなる。・・・」
「そうした対談を経験できた時の至福は、たとえようもない。・・・」
そう。たとえようもない至福に違いない。
対談の中で忘れたくないところを、記録しておきます。
■アニー・エルノー×小池真理子
・人間心理をひたすら哲学してみせる。
・『シンプルな情熱』ハヤカワ文庫(2004年)
・三島由紀夫『春の雪』
■伊集院静×小池真理子
・小池真理子『一角獣』角川書店(2003年)
・(伊集院)永井龍男の『冬の日』だったと思いますが・・・、主人公の女の人が台所で何か仕事をしていてね。数日来の雨で、突然、何年も前に死んだ子どもの花模様のゴム毬が縁の下からスーッと流れ出てくるんだよ。いやあーっ、残酷だね。
・伊集院静『乳房』講談社文庫(1993年)
・小池真理子「春爛漫」 ・・・あるとき、何年か前にまいた節分の豆が自宅の家具と家具のすきまから、コロッと出てきた。そういうときの気分って、いわく言い難いじゃないですか。ああ、あの豆まきをしたころの自分は・・・って。
・・・・何か小さなもので、ハッとすることってありますよね。
・小池真理子『夏の吐息』(「春爛漫」「秘めごと」等収録)講談社(2005年)
・田辺聖子『愛の幻滅』、『九時まで待って』
・向田邦子「かわうそ」 最初の一行と最後の一行がビシッと決まっているんですよ。「日々先から煙草が落ちたのは、月曜の夕方だった」と始まるのかな。脳卒中になった男の人が主人公の話ですね。最後に「写真機のシャッターがおりるように、庭が急に闇になった」と終わってて、・・・
■篠田節子×小池真理子
・篠田節子『インコは戻ってきたか』集英社文庫(2004年)
・小池真理子『天の刻』「襞のまどろみ」文春文庫(2004年)
・(篠田)私自身もそうでしたが、女性の十代から二十代前半までって潔癖で、傲慢ですよね。世間は若さだけでチヤホヤしてくれるし、その傲慢さゆえの潔癖さがあって。些細なことで相手の人格を丸ごと否定したり、否定の言葉も「気持ちわるい」という整理感覚で全部すませてしまう。・・・
■髙樹のぶ子×小池真理子
・(髙樹)男って、嫌になるくらい社会的な生き物ですよね。いつも自分の置かれている立場とか場所とかを考えて、相手との距離を測って行動するでしょう。・・・
・(小池)・・・制度にとらわれていると、それが男の表情や言葉の端々にも出てくるから、男の色気が希薄になってくる。・・・
・(髙樹)せっかく小説を読んでも、男の人は自分の人生のたしにしよう。参考にしようとするでしょう。「徳川家康」を読んでビジネスの教訓を得る。みみっちいですよ。
・(髙樹)女の人が百人いたら百通りの人生があるけれども、男の人が百人いてもせいぜい五通りぐらいの人生しかないんです。本当に人生のバリエーションが少ないと思う。
・(小池)その点、社会の枠から外れた不良の男は想像力がありますよね。ある程度、女にも共感してくれる。
・(髙樹)それは絶対あると思う。不良は、人間はこうあるべきだというふうに、世の中を単純化して考えないからね。
・理屈がすべてがならず、かといって情熱や感性だけに寄りかかることもない。・・・髙樹さんの時間の刻み方は、奇跡を起こさせる者にしかできない刻み方なのだ。・・・
■吉田修一×小池真理子
・(小池)・・・小説家というのは当然いろんな想像力を駆使するんだけれども、想像力以前に、実際に見聞きしたことから何か感性を閃かせていくための観察眼も必要で。・・・
■渡辺淳一×小池真理子
・渡辺淳一『シャトウ リュージュ』文春文庫(2004年)
・小池真理子『虹の彼方』毎日新聞社(2006年)
文庫本の短編集を2冊読み、今度は『秘密 小池真理子対談集』講談社文庫(2009年12月15日第1刷)を読んだ。短編は短い時間、ちょっと空いた時間や寝る前、移動中などに読めるのがいい。この人の小説は、瞬間で文章の世界に入っていける。そして、ふと思った。「この人はどんな人なんだろう?」。
『秘密』の「はじめに」に、こんなことが書いてある。
「男と女の出会い同様、対談においても出会いの不思議がある、と私は思っている。
使う言葉、心の襞、見つめているもの、通りすぎてきたもの・・・そうしたものが、初対面で、ろくに相手のことなど知らずにきたにもかかわらず、不思議とぴたりと一致する。話しが尽きなくなる。・・・」
「そうした対談を経験できた時の至福は、たとえようもない。・・・」
そう。たとえようもない至福に違いない。
対談の中で忘れたくないところを、記録しておきます。
■アニー・エルノー×小池真理子
・人間心理をひたすら哲学してみせる。
・『シンプルな情熱』ハヤカワ文庫(2004年)
・三島由紀夫『春の雪』
■伊集院静×小池真理子
・小池真理子『一角獣』角川書店(2003年)
・(伊集院)永井龍男の『冬の日』だったと思いますが・・・、主人公の女の人が台所で何か仕事をしていてね。数日来の雨で、突然、何年も前に死んだ子どもの花模様のゴム毬が縁の下からスーッと流れ出てくるんだよ。いやあーっ、残酷だね。
・伊集院静『乳房』講談社文庫(1993年)
・小池真理子「春爛漫」 ・・・あるとき、何年か前にまいた節分の豆が自宅の家具と家具のすきまから、コロッと出てきた。そういうときの気分って、いわく言い難いじゃないですか。ああ、あの豆まきをしたころの自分は・・・って。
・・・・何か小さなもので、ハッとすることってありますよね。
・小池真理子『夏の吐息』(「春爛漫」「秘めごと」等収録)講談社(2005年)
・田辺聖子『愛の幻滅』、『九時まで待って』
・向田邦子「かわうそ」 最初の一行と最後の一行がビシッと決まっているんですよ。「日々先から煙草が落ちたのは、月曜の夕方だった」と始まるのかな。脳卒中になった男の人が主人公の話ですね。最後に「写真機のシャッターがおりるように、庭が急に闇になった」と終わってて、・・・
■篠田節子×小池真理子
・篠田節子『インコは戻ってきたか』集英社文庫(2004年)
・小池真理子『天の刻』「襞のまどろみ」文春文庫(2004年)
・(篠田)私自身もそうでしたが、女性の十代から二十代前半までって潔癖で、傲慢ですよね。世間は若さだけでチヤホヤしてくれるし、その傲慢さゆえの潔癖さがあって。些細なことで相手の人格を丸ごと否定したり、否定の言葉も「気持ちわるい」という整理感覚で全部すませてしまう。・・・
■髙樹のぶ子×小池真理子
・(髙樹)男って、嫌になるくらい社会的な生き物ですよね。いつも自分の置かれている立場とか場所とかを考えて、相手との距離を測って行動するでしょう。・・・
・(小池)・・・制度にとらわれていると、それが男の表情や言葉の端々にも出てくるから、男の色気が希薄になってくる。・・・
・(髙樹)せっかく小説を読んでも、男の人は自分の人生のたしにしよう。参考にしようとするでしょう。「徳川家康」を読んでビジネスの教訓を得る。みみっちいですよ。
・(髙樹)女の人が百人いたら百通りの人生があるけれども、男の人が百人いてもせいぜい五通りぐらいの人生しかないんです。本当に人生のバリエーションが少ないと思う。
・(小池)その点、社会の枠から外れた不良の男は想像力がありますよね。ある程度、女にも共感してくれる。
・(髙樹)それは絶対あると思う。不良は、人間はこうあるべきだというふうに、世の中を単純化して考えないからね。
・理屈がすべてがならず、かといって情熱や感性だけに寄りかかることもない。・・・髙樹さんの時間の刻み方は、奇跡を起こさせる者にしかできない刻み方なのだ。・・・
■吉田修一×小池真理子
・(小池)・・・小説家というのは当然いろんな想像力を駆使するんだけれども、想像力以前に、実際に見聞きしたことから何か感性を閃かせていくための観察眼も必要で。・・・
■渡辺淳一×小池真理子
・渡辺淳一『シャトウ リュージュ』文春文庫(2004年)
・小池真理子『虹の彼方』毎日新聞社(2006年)
Posted by わくわくなひと at 14:00│Comments(0)