2011年04月04日

便座上げとけって言ってんだろがっ!東東京人の反乱

 便座上げとけって言ってんだろがっ!東東京人の反乱「文藝春秋」四月特別号の「百二十万人が読んだ芥川賞二作品の波紋」は、けっこう面白かったです。
 朝吹真理子「きことわ」と西村賢太「苦役列車」。対照的な作品・作者で“社会現象”を巻き起こした両作へのさまざまな感想や意見が載っていました。

 一番印象に残ったのは、作家の桜庭一樹(女性)さんの感想でした。

「便座上げとけって言ってんだろがっ!」
 西村賢太氏のデビュー作『どうで死ぬ身の一踊り』は、北町貫多シリーズの一作目である。読んでから五年が経つというのに、未だ忘れられぬのが主人公のこの台詞だ。
 男性がトイレを使った後に便座が上がっているのがいやだわ、と女性から不満を聞くことは多々あるが、男性側からの「女ども、便座上げとけ!」という発言は、初耳だった。
・・・
(と、ごちゃごちゃと理屈っぽく書き連ねてきましたが、一言で言うとファンなんです・・・。大好きなんだよ、もー)
・・・


 確かに初耳でした。なよなよしたモヤシのような東京人ではなく、東東京の「うるせぇバカやロー」という男気を感じてしまいました。そういう、しょうもない男に惹かれる桜庭一樹さんの屁理屈もあったもんじゃねぇ「大好きなんだよ、もー」という表現もいいですね。

 明治学院大学教授の原武史さんは、まさに「東東京の反乱」を書いていました。

・・・(苦役列車の)主人公が生まれたのは、「江戸川区のはずれ、ほぼ浦安寄りの町」である。母親の仕事の都合で町田に住んだこともあったが、東京の西側より東側に愛着をもっている。映画を見るなら上野、風俗に行くなら新宿か池袋と決まっている。
・・・
 東東京の反乱
 新宿や渋谷から西に向かって延びてゆく鉄道の沿線には、「まともな両親のいる家庭環境で普通に成長し、普通に学校生活を送って知識と教養を身につけ、そして普通の青春を今まさに過ごし、これからも普通に生きて普通の出会いを繰り返していく」「人並みの生活」がある。それに対する主人公の嫌悪は「徐々に暴力の衝動を伴う憎しみ」へと変わる。「苦役列車」のラストに近い場面である。
 この場面を読んだとき、私の脳裏にはなぜか、二・二六事件で杉並区上荻窪にあった教育総監の渡辺錠太郎邸を襲撃する青年将校たちが浮かび上がった。あるいは、浅草で映画を見てから井上準之助を暗殺した茨城県出身の小沼正を思い浮かべた。昭和初期のテロやクーデーターも、西東京に対する東東京の反乱といえなくもないのだ。それから半世紀あまりがたっても、基本的構図は変わらなかった。


 ずいぶん前ですが、東京に6~7年ほど住んでいました。いわゆる東東京の標的とも言うべき下北沢周辺です。週に1~2回、家庭教師で西東京から東東京の亀有あたりに行ってましたが、東東京はワイルドで生命力あふれた人たちがたくさんいて嫌いじゃありませんでした。
 東東京と西東京の人や生活の違いは、確かに感じていました。口頭ではよく話題になっていましたが、識者が活字にしているのは確か初めて読んだような気がします。
 地方の人がイメージしている東京人は、西東京人のイメージが強いような気がします。しかし、あの有名な寅さんは、まぎれもなく東東京人ですよね。




Posted by わくわくなひと at 15:26│Comments(2)
この記事へのコメント
西村賢太さん なんか好きです。
「便座上げとけって言ってんだろがっ!」って言われたら
「はぁ~ッ あり得ん」と反抗しつつも、目が♡になってしまうかも…
賛否両論なんでしょうね
でもあたしゃ好き!!
Posted by 如意 at 2011年05月03日 16:28
いっしょに住むのはごめんですけど、30分くらい離れたところにいて、たまに会う友達だったらいいかもですね。優しい口ばかりの男が増えすぎですので・・・。
Posted by わくわくなひとわくわくなひと at 2011年05月03日 18:20
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。