2011年03月07日

太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男

 太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男何週間か前に「太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男」を観た。
 サブタイトルが“Based on a true story”となっており、本当の話に基づいて作られた映画という。
 「1944年、太平洋戦争末期、玉砕の島サイパンにアメリカ軍から“フォックス”と呼ばれ、畏れられたひとりの日本人がいた。」・・・これを描いた映画である。

 「歴史に埋もれた真実の物語である。」「戦後世代のスタッフ、キャストが<戦争>と<戦争映画>を捉えなおす試み」「史実の戦争映画の重み・・・今回ははじめて計算を捨てました。」。

 戦争を知らない世代が史実にこだわってつくった映画。ものすごく難しいことにチャレンジした映画には違いなかった。
 感想は今ひとつ。スタッフの努力は認めたいが、歴史小説ではなく歴史学の論文を読まされた感覚だった。
 いろんな映画の見方や作り方があってもよいと思うが、自分がこの映画に期待したものと描かれ方は重なり合わなかった。

 戦後世代と戦争映画と言えばスピルバーグだが、「プライベートライアン」はもう数十回観ている。いろんな場面の台詞までおぼえている。 この映画「太平洋の奇跡」と「プライベート・・・」の違いは何だろう。
 「プライベート・・・」では、戦争に駆り出された3人兄弟?のうち2人がほぼ同時期に戦死。立て続けに息子を亡くした母親の嘆きはいかばかりかと、「1人生き残った末弟を救出する」命をうけた兵隊たちの話だ。
 兄弟が立て続けに戦死する家。これはアメリカでも日本でも実際にあった話だろう。ただ、命令を受けて犠牲となる兵隊たちの話はフィクションだと思う。主役のトム・ハンクスまで戦死することになる最後の戦闘場面は、黒澤明の「七人の侍」の場面と展開が同じである。
 つまり、「プライベート・・・」は一つの事実からスタートするが、後はフィクションを展開させている。そのフィクションの展開方法は、主人公が敵地に向かい、敵=悪(ドイツ軍)と戦い、末弟を救出するという内容。自分たちの世界から幾多の困難を経て違う世界に行き、大事な人(姫様など)を救出して帰ってくるという世界のどこにでもある物語の構造になっている。しかも、戦闘場面やリアルさの演出では黒澤明のやり方を参考にして出来上がっている。動きの速い戦闘場面ではスローモーションを多用したり、兵士の緊張した顔を強調したりして、作った映像だが観る人にはよりリアルさを感じさせることに成功している。
 これに対し「太平洋の奇跡」は、事実にとことことんこだわったという。
 人の好みや考え方によるが、あなたはどちらの映画を好みとするだろうか。




Posted by わくわくなひと at 22:37│Comments(0)
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