2010年11月28日

忙しい時期にこそ本。本にも旬があり、本を読むにも旬がある

 忙しい時期にこそ本。本にも旬があり、本を読むにも旬がある資生堂名誉会長・福原義春『だから人は本を読む』東洋経済新報社(2009年9月24日発行)。
 これも松丸本舗で購入した一冊。熊本と長崎を往復する車中で、途中居眠りをしながらでも、楽に読了することができた。
 意外かも知れないが、経営者は多読の人が多い。というのも、あれこれ考えることが仕事からだと思う。そんなことをしていて会社が保てるのか?と、私さえもよく聞かれる。本を読んでいるから暇というイメージがある。しかし、「そんなに忙しければ、朝起きた時に顔を洗わなければいいじゃないか。それは困るというなら、どうして本を読むことだけをやめてしまうのか。」と福原氏は言う。確かに本は読もうと思えば、いつでもどこでも、言い訳程度ではなく本気で読みたければ数分ずつでも読めるという考えには共感する。「定年になったらゆっくり読もうという人がいる。ところが残念なことにのんびりする頃にはたぶん体力や視力や感受性も衰えている。忙しい時期にこそ一日十分でも本を読んで、吸収した栄養をその時からの人生に、仕事に役立てるべきなのだ。本にも旬があり、人が本を読むにも旬が大切だ。」。
 さらに、氏は本の中でも「先人が深い考えで書いた古典、あるいは人間や物事の本質を見極めようとする本」を読みなさいと、この本全体を通じて提言している。
 「ハウツー本も時には役に立つと思っているが、それはポテトチップスやチョコレートのようにおいしいけれど、あくまで副食やスナックであって、やはり主食であるご飯を食べないと健康な体は作れない」とし、古典や本質を見極めようとする本を薦める。最近の書店に対しても、「本当に大事にしたいと思う本になかなか出会えない」とし、本を単なる消費財のように扱った「帯やタイトルを含めそこにある惹句などを考えてみても、どうも中身と合っていない」本が多いと指摘する。書き手、編集者、営業・販売部員から書店まですべての担当者が「自分の仕事だけしかせず、本が書き手から読者に渡るまでの流れに思いをはせていない。」という現状から、それらをまとめるプロデューサーの出現を期待しているという。
多読な人だけに、この本の中には死ぬまでに読みたい本がいくつもちりばめられていた。

■モーム『月と六ペンス』
・「われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか」。ゴーギャンの生きたかを描写
■シルヴェスター『インタビューズ』(二巻)
・二十世紀の各界著名人のインタビュー記録
■ハート『第二次世界大戦』
・実戦に参加した司令官や参謀長から取材
■松岡正剛『情報の歴史』
・歴史を構造としてとらえられる不朽の名著
■ファインマン『ご冗談でしょう、ファインマンさん』
・ノーベル物理学賞の学者の半生記。楽しく読めるとともに、その奥に無数の智慧みたいなものがかくされている
■ダンテ『神曲』
■プラトン『ソクラテスの弁明』

・人間とはかくのごときものであり続けるのか
■カエサル『ガリア戦記』岩波文庫
・1942年第一刷、2009年6月時点で第68刷。
■マックス・デプリ―『リーダーシップの真髄 リーダーにとって最も大切なこと』
・グリーンリーフのサーバント・リーダーシップの思想
■司馬遷『史記』
・人間は案外にもろく、何回も愚かなことを繰り返してしまう生き物だからこそ、相も変わらぬ過ちを犯し続けている。だからこそ人間の歴史を描いた本書が必要。尊皇攘夷、臥薪嘗胆、鳴かず飛ばすといった成語の原型や物語の宝庫であり、奥深い人間論
■内村鑑三『日本及び日本(のちに『代表的日本人』に改題)』
■岡倉天心『茶の本』
■トフラー『富の未来』講談社
■ジャン・ジオノ『木を植えた人』こぐま社

・資生堂では社員全員にこの本を配布
■コトラー『ミュージアム・マーケティング』
・ミュージアムの使命は儲けることではなくて、人々に影響を与えること、世の中を変えていくこと。そのためにこそ人が入らなくてはならない。この本を読むとそもそもマーケティングとは何か、その本質を理解することができる。
■ラ・ロシュフコー『ラ・ロシュフコー戯言集』岩波文庫
・たった一行か二行の戯言の中に人間の本質をこんなに明確に書いたものはない
■川喜多二郎『パーティ学』絶版
■荻原朔太郎『猫町』
■谷崎潤一郎『陰翳礼讃』(中公文庫)

・文体、体裁、品格それに含蓄のすべてが備わった純度の高いエッセイ。この小論の白眉は闇の中で見る蒔絵の美しさであり、また暗い能舞台で見る能役者の肌の色の美しさを論ずるところにある。
■宮沢賢治『銀河鉄道の夜』岩波文庫




Posted by わくわくなひと at 00:24│Comments(2)
この記事へのコメント
女子高生はテスト前になると部屋の掃除を始めるとか言いますよね。
私は、テスト前になるととても本を読みたくなりました。
私にとっての本は現実逃避なのかも。
つまりは副食やおやつのような本しか読んでいないということでしょうか。
副食やおやつは少しの量では止められません。
だから、夜泣き俗の私は忙しいときは極力布団の中で本を開かないようにしています。
あっという間に2時、3時、4時になってしまうから…。
Posted by chitty at 2010年12月04日 20:08
現実逃避という意味合いもありますね。
追い込まれたシチュエーションで、女子高生する、という言葉で通じますよね。
Posted by わくわくなひとわくわくなひと at 2010年12月06日 10:33
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