2010年08月31日
北方謙三『望郷の道』<上><下>

まあストーリーテラーというのでしょうか。すらすらと情景や場面が頭に浮かんできて、ものすごく読みやすい小説でした。
遠賀川周辺や佐賀の話ですので、その辺りの方言のオンパレード。北部九州の人には、会話が何の苦もなく頭に入ってくるところも新鮮でした。
モデルは北方謙三の曾祖父にあたる人らしく、遠賀川で石炭を運ぶ船頭のまねごとをしながら過ごしていた主人公が佐賀県内に三つの賭場を持つ藤家の女将と結婚。主人公が賭場の改革をしながら見事に稼業を拡大していくが、陰謀にはまりに九州から追放される。台湾に落ちのびた主人公はキャラメルなどお菓子をつくる会社を興し、最後は九州に戻ってくることが許されるという話です。
豪快で事業の才覚があり、話は波瀾万丈です。本当にあった話がモデルになって書かれているとは思えないほどの内容です。
小さい失敗らしきことはあるが、打つ手が次々と当たる。
「執念と呼べるほどの熱意を、私たちは忘れていないか?」と帯に書いてあり、そのあたりを相当期待して読みはじめました。しかし、そこまで恐れ入るというほどではありませんでした。
ほんの少し思ったことですが、ひょっとして、自分の今の日々の方がスリルがあるかも知れないと。
Posted by わくわくなひと at 20:12│Comments(0)
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