2010年07月21日

制作から配達・放送までのビジネスモデルが崩壊~新聞・テレビ

制作から配達・放送までのビジネスモデルが崩壊~新聞・テレビ『電子書籍の衝撃』に続いて、佐々木俊尚さんの>『2011年新聞・テレビ消滅』文春新書(2010年4月20日第8刷、2009年7月20日第1刷)を読みました。以前のブログで紹介した品川の書店で買った本です。
 内容からみて、書名は大げさですが、帯に書いてある「ビジネスモデルは崩壊した」は当たっているかと思います。
 プロローグにこう書いてあります。
『マスメディアに対して批判的なインターネットでは、これを「自業自得」と見ている人が多い。たとえば新聞は再販制度に守られてぬるま湯に浸り続け、あげくに「押し紙」などという発行部数の水増しを行って弱小新聞販売店をいじめてきた。このような自浄作用のない行為をとってきたのだから、読者に反発されて当然だ。またテレビも同様で、電波免許によって守られてきた放送局は番組制作を下請けの制作会社に放り出し、自分たちだけ高い給料をもらって何の努力もしてこなかった-。
マスメディアの傲慢なのは紛うことのない事実で、そうした「上から目線」的なマスメディアの体質に批判が集まるのも当然だろう。しかしいま起きているマスメディアの衰退は、本当にマスメディアの旧態依然とした体質が原因なのだろうか?
答えはノーだ。』

 筆者は傲慢、旧態依然とした体質に有無を言わせることなく、インターネットの普及によって、ビジネスモデルが崩壊したことを本書で説明します。
 なかでも、グーグルの及川卓也氏による「コンテンツ」「コンテナ」「コンベヤ」で業界構造を把握し、どう変化していっているかを解釈する手法は新鮮でした。
 例えば、新聞は紙面制作から印刷、流通、そして配達までがすべてひとつの新聞社もしくはグループで統合されている、垂直統合型のビジネスモデルです。これを「コンテンツ」「コンテナ」「コンベヤ」という三つの層に分けて説明しています。コンテンツは記事そのものでコンテナはそれらの記事を運ぶ容器、そしてコンベヤは容器のコンテンツを配達してくれるシステムです。
 新聞はこうなります。
 コンテンツ=新聞記事 コンテナ=新聞紙面 コンベヤ=販売店
 テレビは、
 コンテンツ=番組 コンテナ=テレビ コンベヤ=地上波、衛星放送、CATV

 この垂直統合モデルが破綻に瀕し、水辺分散モデルに移行し始めているというのが、大枠での本書の内容です。
▼新聞
 コンテンツ=新聞記事
 コンテナ=ヤフーニュース、検索エンジン、だれかのブログ、2ちゃんねる
 コンベヤ=インターネット
 これは新聞社がどう主張しようと、確かに、入り口が新聞社や新聞ではなく、別の経路をたどって新聞記事を読むのが当たり前になってきています。
 チラシに対する消費者行動も大きく変化しています。
 コンテンツ=折り込みチラシ コンテナ=新聞のすきま コンベヤ=新聞販売店
 しかし、例えば田園都市線たまプラーザ近くに住む共働きの夫婦がいたとして、夫は恵比寿の会社に勤務し、妻は新宿の会社に勤務している。そうすると、この夫婦が買い物する場所は四箇所に分散しているそうです。
①自宅のあるたまプラーザ②夫の会社のある恵比寿駅周辺③妻の会社にある新宿駅周辺④二人が山手線から田園都市線に乗り換える渋谷駅周辺
 すると、「チラシを取るためだけに月々4000円も払うのって、なんかムダじゃない?」と思う。チラシならインターネットで、いろんな地域の特売チラシが見れるので、新聞やめて、そうしようと思う人も増えてきているそうです。

▼テレビ
コンテンツ=番組
 コンテナ=テレビ、ケータイ、ゲーム機、パソコン(パソコン上のユーチューブ)
 コンベヤ=電波、ケーブルテレビ、インターネット
(テレビ局を支える三要素)
 ①番組コンテンツ②電波免許③マスメディアとしての広告効果
 情報通信法案が施行されれば、テレビ局がどう文句を言おうが、コンテンツは電波からでもインターネットからでも、あらゆる伝送路を通って自由に流通できるようになるそうです。

 つまり、この本によると、垂直統合によって成り立っていた新聞社やテレビ局のビジネスモデルが崩壊し、新聞社やテレビ局が抑えられるのは「コンテンツ」の部分だけになる。すると、これまでのような高い給与で大人数の従業員を賄えなくなるということが、この本では解説されています。
 そう著者が力説しても、「新聞・テレビの消滅」はないと思います。消滅するのは本業以外に手を出しすぎたところでしょうか。ただ、生き残る新聞社やテレビ局は、今のような巨大組織ではないという説には、そんな感じもします。




Posted by わくわくなひと at 14:49│Comments(0)
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