2010年07月07日

世の流れが分かった気分に!一気に読める地域開発政策批判論

世の流れが分かった気分に!一気に読める地域開発政策批判論岡田知弘『地域づくりの経済学入門 地域内再投資力論』自治体研究者(2008年11月20日第3刷、2005年8月10日初版第1刷)。
半年くらい前、私が参加しているメーリングリストで話題になった本です。
メーリングリストの知り合いが福岡から熊本にJRで来る際に、「電車で一気に読み進んだ。帰りの電車で最後まで読んでしまう。」ということを聞いて、「それなら」と私も読むことにしました。
京都大学大学院経済学研究科の教授である著者が、高度成長期以降の地域開発政策を批判的にふり返り、例えばグローバル資本や大企業に地域がいかに振り回されてきたかを解説しています。
失われた10年と言われた時代から小泉改革、そして現時点をながめてみると、不況が続いてきたと言われる割りに「東京がずいぶん発展したな」と思うことがあります。
私が東京にいた頃は今から25年以上前になります。高層ビルが林立する地域は新宿であり、ほかは池袋、霞ヶ関、浜松町、田町あたりにポツッポツッと高層ビルが建っている程度でした。それが今は品川、新橋あたりを中心に、どでかい高層ビルがひしめき合うように建っています。このような東京の再開発は確かに失われた10年以降に加速したような感じがします。
東京に比べ九州はどうか?福岡の天神や博多あたりは元気ですが、福岡以外の九州内の都市はどうでしょうか。町村はどうでしょうか。どうみても疲弊しているという感じです。単に、車や電車から景色を見ているだけなんですが、色のはげた看板や補修していない家などが次々と目に飛び込んできます。
本書は、こういった今の現実が浮かび上がってきた背景を構造的に明らかにしてくれます。もちろん、官僚とは与しない在野の学者としての一方的な視点で書かれていることとは思いますが・・・。
では地方はどうすればよいか?筆者は地域内再投資力と地域内経済循環の確立、地域住民主権を処方箋として掲げています。
都市部から比較的離れている合併していない町村や零細中小メーカーの横連携の事例なども解説してあり、書棚に参考書として保存しておく価値くらいはあるかなぁと思いました。
著者の視点で私が一番印象に残った視点は、以下の通りです。
「資本は一方では、交易すなわち交換のあらゆる場所的制限を取り払って、地球全体を自己の市場として獲得しようと努めないではおられず、他方では、時間によって空間を絶滅しようと、すなわちある場所から他の場所への移動に要する時間を最小限に引き下げようと努める」『マルクス資本論草稿集』

 著者は昔言われていたマル経出身の方でしょうか。この文章を読んで、九州新幹線が何となく浮かんできました。


Posted by わくわくなひと at 12:16│Comments(0)
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