2010年07月04日

作者不詳の民芸品の美を発見!柳宗悦『手仕事の日本』

作者不詳の民芸品の美を発見!柳宗悦『手仕事の日本』 久々に懐かしい岩波文庫を読みました。柳宗悦『手仕事の日本』という小さな文庫本です。岩波書店の本は、学生時代にはよく目に触れていましたが、最近はすっかりご無沙汰しておりました。便利さや易きに流れず物事の本質に触れるような快感がありました。
 この本を読みたくなったのは、最近、手仕事や手作りの商品に関わることが多く、それらのよさを先人はどのように表現しているかに関心を持つようになったからです。
 文章は太平洋戦争中に書かれたものです。
「機械では生まれないものが数々ある」「機械は世界のものを共通にしてしまう傾きがある」「人間が機械に使われてしまうためか、働く人からとかく悦びを奪ってしまいます。」
「・・・どうしても手仕事を守られねばなりません。その優れた点は多くの民族的な特色が濃く現れてくることと、品物が手堅く親切に作られることであります。そこには自由と責任とが保たれます、そのため仕事に悦びが伴ったり、また新しいものを創る力が現れたりします。それ故手仕事を最も人間的な仕事と見てよいでありましょう。ここにその最も大きな特性があると思われます。仮にこういう人間的な働きがなくなったら、この世に美しいものは、どんなに少なくなって来るでありましょう。」
「手はただ動くのではなく、いつも奥に心が控えていて、これがものを創らせたり、働きに悦びを与えたり、また道徳を守らせたりするのであります。そうしてこれこそは品物に美しい性質を与える原因であると思われます。それ故手仕事は一面に心の仕事だと申してもよいでありましょう。」

 柳宗悦は、こんな視点を持って、20年余りかけて、北は東北から南は沖縄まで、日本全国の手仕事を見て回りました。そして、作者不詳、銘文なしの実用的な民芸品の中に本当の美を見つけ出していきました。某テレビ局の“お宝探偵団”?とは、まったく相容れない視点です。
 この本で紹介されている手仕事の中には、すでに絶えているものもたくさんあります。21世紀は行き過ぎた機械文明や効率・効果を重んじる思考の副作用に見舞われている時期ですので、ときどきは柳宗悦の本を読み返しながら、手作り品のよさを伝えていく役割を少しでも担いたいと思いました。




Posted by わくわくなひと at 12:46│Comments(0)
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