2010年05月04日

『もしドラ』岩崎夏美・講演会メモ

 ずいぶん月日が経ちましたが、04月17日(土)の13:30から、福岡百道浜のTNC放送会館のVSQスタジオで岩崎夏美講演会がありました。あのベストセラー「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(通称『もしドラ』)の著者による講演会です。
 私の周辺の人から感想は書かないのか、いくつか催促がありましたので、書くことにしました。
 以下は感想というより、講演会での私なりのメモの要旨です。
今、ちょうどチクセントミハイやドラッカーを読む機会が多いのですが、岩崎氏の考え方と同じようなことが書かれています。こういった書物をよく読み込んで、自分の頭で考え抜き、実践してきたのが岩崎氏ではないでしょうか。

~物静かそうなスキンヘッドのおじさんが登場~
 今、旬の人ということで、どのような展開になるか予想もつかなかった。200席余りの会場は20~30歳代の若い人たちが多い。
 そんな中、スキンヘッドの眼鏡をかけた一見物静かそうなおじさんが登場。“夏美”という名前から、何となく女性を想像していた自分に改めて気づく。
 今の時代を読み解く鍵は?世の中、何となく閉塞感が漂っている。何か元気がないのは何が原因か。東京や都会の人に多い早口でまくしたてるような感じではなく、ゆっくり、ときどき天井を見ながら、考えながら、マイペースで話す。

~今の閉塞感は行き過ぎた個人主義が要因~
 モノが売れない。テレビもダメ。ITも不況。映画もよくない。新聞とラジオはもっとひどい。しかし、2009年にはメガヒットも生まれている。1Q84、ドラゴンクエスト9、アバター・・・。実は売れているものは売れている。格差が生まれていることが、今の時代を読み解くヒントだ。
 生きにくくなっているのは規範や規律がない、共通の価値観がないから。こういったことの価値に気づかずに、一人ひとりが分断されて、孤独を感じている。これが閉塞感や元気がない本当の要因だ。
 「なぜ人を殺してはいけないのか」という子どもの疑問に答えられない。何かかっちりとした答えが欲しい。拠り所がなく気持ち悪さだけが残る。登校拒否に対して、「行きたくなったら行きなさい」と言う。しかし、根本的には学校に行かないと問題解決はできない。
 根底には“行き過ぎた個人主義”がある。価値観の多様性がみなさんを幸せにしたか。実はそうではない。皆さんもうすうす感じてきている。

~手近な解決法では根本的な解決に至らない~
 価値観の多様性は何をもたらしたか。うまい生き方がクローズアップされる。手近に、こうしたらいいという情報があふれている。多くのビジネス書が皆さんに受け入れられている。
 生きづらさを感じた時に、パッと答えが見つかるので、手近な、その場限りの小手先のテクニックで解決している。自分のトラウマをひもとき始める。テレビや雑誌でその原因を見つけてきて、生きづらさの原因を見つけたと思って落ち着く。しかし、肝心の生きにくさは全然解決されていない。自分を慰める情報や道具が手近にあるばっかりに根本的な解決に至らない。
 自分の生きるためのセンサー、生きるための力、野生、目や鼻など五感も鈍っている。自分が面白いと思っているのか、健康なのか、気持ちいいのかさえ分からなくなっている。
 自分が何に対して、嬉しいのか、喜びを感じるのか分かっていない。

~働くこと。これがなくなると人間は生きられない~
 働くことをネガティブに感じている人がいる。楽して生きたい、お金をガンと儲けて後は楽して生きたい。そんな人がいる。
 働くということは、つらい、難しい、面倒と思うが、これがなくなると人間は生きられないようになっているし、働くことは喜びをもたらす。やらなければならないことが喜びをもたらす。仕事がなくなったら幸せにならない。働くことが人間にどれだけの喜びをもたらすのか気づいていない。
 
~「自分の手柄でない方が嬉しい」。これが人間の本質~
 みなさん!幸せとは何か。多くの人が幸せを勘違いしている。自分が何か成し遂げることが幸せになると思っている人が多いが、それは幸せをもたらさない。
 オリンピックでメダルをとった人が言っていた。「自分がメダルをとったときよりも、コーチとして弟子がメダルをとった時がもっと嬉しい」。ここに人間の本質がある。
 人は他人に何かを成し遂げさせたり、誰かに貢献したとき、組織が成し遂げた時が、一番嬉しく感じるものだ。
 さくほど亡くなった巨人の木村拓哉さんが若い巨人の選手に向かって言っていた。「14年別のチームでプレイをしてきたが嬉しくなかった。巨人で初めて優勝を経験した。優勝とは、こんなに嬉しいものか。そういうことを目指して欲しい。いかに個人が組織に貢献するか」。
 ホームランを打ったダイヤモンドを黙々と走る選手より、実はベンチのチームメイトの方が盛り上がっている。「自分の手柄でない方が嬉しい」。これが人間の本質ではないか。
 人間は社会的に生きていくことに喜びを見出すように刷り込まれている。本当は、これが喜びであるはずなのに、今の社会はそれを感じない人が出てきており、これが生きづらさの原因か?
 自分が成果を上げるために、他人を蹴落とすことで自分が幸せになると考えることが、不幸せになる。

~自分を信じるのは害悪。誰かに貢献を~
 自分自身を疑ってみませんか?自分の信じた道、やりたいことをやっても幸せにはなれない。誰かに貢献しないと不幸になる。
 JPOPでは、「自分を信じろ」、「あきらめるな」と繰り返し歌われている。みんな勘違いしている。自分を信じるというのが害悪。自分の感覚を信じてニートになる。自分だけが儲ければいい。彼等は幸せでしょうか。
 自分の感覚は正しくないのではないかと、疑ってみる必要がある。

 私は、かつて「自分が」「自分が」という気持ちがあったが、四面楚歌になった。37歳の時に、自分を疑い信じたものを捨てる作業がいると気づき、3つのことを始めた。

一つは、プライドを捨てる。プライドが人間の邪魔をする。例えば、心からへりくだって、「ありがとうございます」と声をかけてみる。すると6~8時間の労働が楽しくなる。幸せになる。
 二つ目は、「人は自分のことが一番知らない」ということを知る。人間の気持ちは他人の方がよく知っている。人間は客観的に見ることは不可能。自分の判断は間違う。自分を過大評価する。自分はこういうのが面白いと思っているが、本当はそうではなもと疑ってみる。自分は間違うという前提で見直してみると、真実が見えてくる。
 三つ目は、我慢が足りない。我慢をしてはいけないという価値観が蔓延している。次はダイエットの本を書く。ダイエットは食べないことが一番。食べないから不健康になるというのはウソ。「楽して」とか何かうまい話はないかと、みなさん思うだろうが、有史以来、そういうことがあった試しがない。
 我慢こそが尊いという価値観を持つことが壁を乗り越える要素となる。

 これ以外では福岡の素晴らしさについての話や質疑応答などがありました。
後、書き留めておきたかったことは、以下の通りです。

Q:岩崎さんの考えを広めるには、どうしたらいいか。
A:広まらなくてもいいやと思うことが大事。井上陽水の歌に「さがすものをやめたとき よく見つかる話で」というのがある。あまり広めようと思わず、面白いものをつくり、皆さんを巻き込んでいく。これが近道ではないでしょうか。興味があることが必ずしも正しいことはではない。
Q:友だちなど自分のしがらみを捨てるという話があったが・・・。
A:自分として成功しないことが成功です。私は自分として成功するという概念が納得できない。自分として成功する必要はないと思う。
Q:ドラッカーが真摯であることを強調していますが・・・。
A:真摯とは何か。そう問い続けることが大事。絶対的な答えはないが絶対的な問いはある。重要なのは質問の方だ。
Q:テレビ番組がつまらなくなった要因は?
A:視聴率という評価軸の問題。つまんないけど視聴率が高いことが問題。テレビを面白くするためには新しい評価軸をつくることが必要。
Q:規範という強い価値観が失われた。回復するには?
A:みんなが謙虚になる必要がある。昭和30~40年代を無批判に賛美しているが、この時代を支えていたのは教育勅語で育った人たちです。武士道のことを書いた『葉隠』に絶対的な基準として「死ぬことと見つけたり」があります。今は死が身近でなくなったことが問題だと思っています。
『もしドラ』岩崎夏美・講演会メモ



Posted by わくわくなひと at 17:47│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。