2010年02月14日

寝る前に読むと癒されます。「食堂かたつむり」

 同僚から、「まあいい小説です」と紹介された本です。
借りて読んでみました。
 寝る前に50から100頁ずつ。文章表現や感覚が豊かで疲れません。話の展開もゆったりとして、「まあいいかな」と思いました。
 恋人のインド人がいなくなった何もないマンションの部屋の描写から始まります。そのショックで声も出なくなる。
 山里みたいな自分のふるさとに帰って、“おかん”の家の横で「食堂かたつむり」を始めます。
 料理のレシピがとにかく詳しい。よくは分かりませんが、女心が正直に感覚豊かに書き込まれているような気がしました。人や動物、植物も含めて、命や料理すること、食べることの意味、自然な営みなど、あまりの利便性に慣れた我々が忘れてしまった気持ちが気負うことなく書いてあるような気がしました。
 この2月から映画が公開されているそうです。しかし、いつの間にか、高嶺の花の女優さんというイメージではなく、その辺の街で出会いそうな、ふつうの正直に生きている女性のイメージを持ってしまいました。
 センテンスが短いさらさらとした文章ですが、さすが小説家。私とか似たようなものを見ているはずなのに、こんな濃い感じ方もしないし表現もできません。
 1973年生まれの小川糸という女性は、少し気になる存在になりました。

 何となく書き留めたくなった文は、以下の通りです。

・無花果の葉っぱのすき間から降り注ぐ光が、小川の底で舞い散っていた。
・カップ酒の瓶には花びらの先の先までぴんぴんとした色鮮やかな菊の花が活けられている。
・どれもが、懐かしくてくすぐったくなるような、けれど手のひらで今すぐ握りつぶしてしまいたくなるような景色だった。
・商店街のシャッターも、その人形の目のように下の方が少しだけ開いていた。
・村で唯一の洋菓子屋の前を通ると、換気口からもったりとした甘い匂いが流れてくる。
・海の底で時を止めて眠り続ける、昔の地方都市のようだった。スーパー・ヨロズヤの電飾が、生命維持装置のように点滅している。
・自分が本来の姿に戻れるような、しっかりと大地に根を下ろしたご馳走だった。
寝る前に読むと癒されます。「食堂かたつむり」



Posted by わくわくなひと at 14:13│Comments(0)
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