2009年12月17日
江戸の熟年世代の物語八つ・・・山本一力『八つ花ごよみ』
「おてもやん」ブログの方の紹介で、山本一力『八つ花ごよみ』新潮社(2009年7月20日)を読んだ。
帯には「苦楽をともにした連れ合いと、あるいは友とー。大切な絆を慈しみ生きる」と書いてある。内容はその通り。江戸の庶民、それも熟年世代の物語が八つおさめられている。
江戸ものと言えば、サムライの話はある程度読んできたが、商人や職人の話はほとんど読んでいなかった。即効性のある新薬ではなく、じっくり心に染みこんでくる漢方薬のような話が揃っている。
しょせん空想の世界で、当時の人の考え方など確かめようがないが、目立たず派手でもなく慎ましい暮らしぶりには、憧れのようなものを感じてしまった。
以下は、鉛筆で何となく線を引いてしまった箇所である。
・・・・・・
しっかりと歩き、食いたいものにはカネを惜しまずに払う。
これもまた、親方から教わったことだった。
「食うことを軽くみるやつを、信じちゃあならねえ。寝るのと食うのは、達者に生きるための源だ。食うことにゼニを惜しむやつは、てめえの命を安売りするやつだと思え」
泰蔵はいまでも大事に守っていた。
・・・・・・
「たいした明るさじゃないか」
泰蔵はてんぷらを口にする前に、行灯の明るさを褒めた。
・・・・・・
「暮らしに入り用な消え者を商うんだ。自分の暮らしが成り立つ実入りがあればいい」
・・・・・・
「道理で深川生まれならではの、ぐずぐず言わずにすっきりした掛け合いをするはずだ」
・・・・・・
味醂干しは少しでも目を離すと、すぐに焦げてしまう。焦がさず、しかし生焼けにしないためには、味醂干しにつきっきりでなければならない。
・・・・・・
「世のものすべてを真っ新(さら)にしてくれる初春の雪とは、なによりの趣向じゃないか」
帯には「苦楽をともにした連れ合いと、あるいは友とー。大切な絆を慈しみ生きる」と書いてある。内容はその通り。江戸の庶民、それも熟年世代の物語が八つおさめられている。
江戸ものと言えば、サムライの話はある程度読んできたが、商人や職人の話はほとんど読んでいなかった。即効性のある新薬ではなく、じっくり心に染みこんでくる漢方薬のような話が揃っている。
しょせん空想の世界で、当時の人の考え方など確かめようがないが、目立たず派手でもなく慎ましい暮らしぶりには、憧れのようなものを感じてしまった。
以下は、鉛筆で何となく線を引いてしまった箇所である。
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しっかりと歩き、食いたいものにはカネを惜しまずに払う。
これもまた、親方から教わったことだった。
「食うことを軽くみるやつを、信じちゃあならねえ。寝るのと食うのは、達者に生きるための源だ。食うことにゼニを惜しむやつは、てめえの命を安売りするやつだと思え」
泰蔵はいまでも大事に守っていた。
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「たいした明るさじゃないか」
泰蔵はてんぷらを口にする前に、行灯の明るさを褒めた。
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「暮らしに入り用な消え者を商うんだ。自分の暮らしが成り立つ実入りがあればいい」
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「道理で深川生まれならではの、ぐずぐず言わずにすっきりした掛け合いをするはずだ」
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味醂干しは少しでも目を離すと、すぐに焦げてしまう。焦がさず、しかし生焼けにしないためには、味醂干しにつきっきりでなければならない。
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「世のものすべてを真っ新(さら)にしてくれる初春の雪とは、なによりの趣向じゃないか」
Posted by わくわくなひと at 13:29│Comments(0)