2009年11月23日
クオリアは表現できない?・・・茂木『脳のなかの文学』文春文庫
茂木さんの本をもう何冊読んだろうか?ベストセラーのリストに入る彼の本はあんまり読んだことはない。どちらかというと、そこそこしか売れていない本を中心に読んでいる。
この本も今年の1月に発行して、まだ初刷りだから、彼の本としてはあんまり売れていない部類に入るのだろう。
けっこう難解な文章である。三月ほど前に買った本だが、しばらく後まわしにしてきた。しかし、自分の家にある本の不良在庫がなくなってきたので、ついに読むことにした。
そして、30頁ほど読み進んだ時に衝撃を受けた。
以下の文である。
「私たちが感じるクオリアは、すべて、それを実際に体験すること自体に比べれば、あらゆる比喩や説明が意味をなさないという特質を持っている。」
「そもそも、文学でも絵画でも映画でも音楽でも、自らの最上の芸術体験を振り返って見れば良い。そこに立ち上がってくるのは、どんな言葉にも意味にも構造にも、ましてや機能にも置き換えられない、一つの印象=クオリアなのではないか。」
「美との出会いは、私たちの生活世界の中に潜行し、私たちを不意打ちするものとして現れる。」
これらの文章を読んで、太宰府で「阿修羅像」を見た時を思い出した。
ものすごい質感を伴う心の揺れを阿修羅を見た時、体験した。この気持ちをどう表現していいのか、自分には表現力がないために、どうにもできないと思いこんでいた。このため著名人が阿修羅を見て書き記した本まで購入し、自分の気持ちを自分で理解しようとした。
しかし、茂木さんの説によると、「それを実際に体験すること自体に比べれば、あらゆる比喩や説明が意味をなさない」ということだ。この茂木説を読んでも「感動を何とか表現したい」という欲求を収めることができない。
「阿修羅」には太宰府で会ったが、松岡正剛さんのお話しも太宰府で聞いたことがある。松岡さんのことも、この本の中に書いてあった。現代人にとって、ものすごく大事な視点だ。そう言えば、創造性の達人である恩師が「あんまり本は読まない」と言っていた理由が分かったような気がした。
『かつて、情報という概念の本質について議論した時、松岡正剛は、「現代人は情報が横から来ると思っているけれども、昔の人は上から降ってくると思っていた」と言った。ここで「上から」とは、文字通り空間的な上方に由来するという意味ではない。この現実世界の中を流通して「私」にやってくるのではなく、自分の無意識の中から生成される何か、という意味である。』
この本の中で、今後、読んでみたいと思った本やテープも備忘録として記しておこう。
・飯沼勲「神風連史話」
・小林秀雄・講演テープ『信ずることと考えること』
・広沢虎造『清水次郎長伝』
この本も今年の1月に発行して、まだ初刷りだから、彼の本としてはあんまり売れていない部類に入るのだろう。
けっこう難解な文章である。三月ほど前に買った本だが、しばらく後まわしにしてきた。しかし、自分の家にある本の不良在庫がなくなってきたので、ついに読むことにした。
そして、30頁ほど読み進んだ時に衝撃を受けた。
以下の文である。
「私たちが感じるクオリアは、すべて、それを実際に体験すること自体に比べれば、あらゆる比喩や説明が意味をなさないという特質を持っている。」
「そもそも、文学でも絵画でも映画でも音楽でも、自らの最上の芸術体験を振り返って見れば良い。そこに立ち上がってくるのは、どんな言葉にも意味にも構造にも、ましてや機能にも置き換えられない、一つの印象=クオリアなのではないか。」
「美との出会いは、私たちの生活世界の中に潜行し、私たちを不意打ちするものとして現れる。」
これらの文章を読んで、太宰府で「阿修羅像」を見た時を思い出した。
ものすごい質感を伴う心の揺れを阿修羅を見た時、体験した。この気持ちをどう表現していいのか、自分には表現力がないために、どうにもできないと思いこんでいた。このため著名人が阿修羅を見て書き記した本まで購入し、自分の気持ちを自分で理解しようとした。
しかし、茂木さんの説によると、「それを実際に体験すること自体に比べれば、あらゆる比喩や説明が意味をなさない」ということだ。この茂木説を読んでも「感動を何とか表現したい」という欲求を収めることができない。
「阿修羅」には太宰府で会ったが、松岡正剛さんのお話しも太宰府で聞いたことがある。松岡さんのことも、この本の中に書いてあった。現代人にとって、ものすごく大事な視点だ。そう言えば、創造性の達人である恩師が「あんまり本は読まない」と言っていた理由が分かったような気がした。
『かつて、情報という概念の本質について議論した時、松岡正剛は、「現代人は情報が横から来ると思っているけれども、昔の人は上から降ってくると思っていた」と言った。ここで「上から」とは、文字通り空間的な上方に由来するという意味ではない。この現実世界の中を流通して「私」にやってくるのではなく、自分の無意識の中から生成される何か、という意味である。』
この本の中で、今後、読んでみたいと思った本やテープも備忘録として記しておこう。
・飯沼勲「神風連史話」
・小林秀雄・講演テープ『信ずることと考えること』
・広沢虎造『清水次郎長伝』
Posted by わくわくなひと at 19:52│Comments(0)