書籍購入による散財報告 渡辺京二『熊本県人』は最高傑作

わくわくなひと

2012年03月11日 22:59

 実は性懲りもなく3月9日(金曜日)、再び散財!苦し紛れに書き留めておく。
 この日夕刻より、いやな予感はしたが天神のジュンク堂書店とTSUTAYAで3時間ほど過ごしてしまった。足を向かわせたのは、数日前の茂木健一郎氏の講演の中で、インターネット社会やグローバル化の進展の中で東大や九大は頼るべきではなく、今や松下村塾のような心を共有するような私塾が対応可能な時代という内容が気になっていたからである。
 それは吉田松陰について一通り知りたいという欲求として顕在化し、書店を浮遊することとなった。入門編としては、まず司馬遼太郎の本だろうと思い、ジュンク堂書店の文庫本コーナーで目星をつけ、TSUTAYAに古本があれば購入すると決めていた(何と小市民的で賢い選択!)。TSUTAYAでは司馬氏の「世に棲む日日」を見つけたが、全ての巻がそろっていないので買うのはやめた。その代わり『司馬遼太郎 歴史のなかの邂逅』(中公文庫)が全巻並べられていることを発見。しかも、古本だから1冊350円。吉田松陰はもちろん空海、勝海舟、坂本龍馬など日本史の偉人たちに対する司馬氏の見方をすべて知ることができる。いい買い物だ!しかし、帰宅して気づいたことだが、3巻が欠けていた。
 ジュンク堂書店では司馬氏の本を探索するついでに、前から読みたいと思っていたウィンストン・チャーチル『第二次大戦回顧録 抄』(中公文庫)を偶然見つけたので即刻購入。今日、東日本大震災から1年ということで、日経新聞と西日本新聞のコラムに、米国を代表する日本近代史の研究者ジョン・ダワーの『敗北を抱きしめて』のことが紹介されていた。ダワー氏曰く「歴史の複雑さを理解し整理する努力をあきらめてはいけない」。チャーチルの本は、まさにそんな内容だと期待する。
 「よし、どれから読もうか」期待に胸をふくらませて、ジュンク堂1階の新刊本コーナーを通り過ぎようとした時、“熊本県人”と大書された本が5冊ほど棚に置いてあるのに気づいた。「何だろう?」と思って近づくと、熊本在住の大知識人、渡辺京二氏の本だった。
 帰宅して、何から読み始めたかというと、『熊本県人』言視舎(2012年2月28日初版第1刷)。1972年新人物往来舎より刊行された『熊本県人』を再編集した内容という。熊本ゆかりの者しか通用しないと思うが、前半はニタニタして読めるし、「おい!こう書いてある。」と人に読んで伝えたいほど面白い。後半は熊本の偉人や思想史となっており、肥後人及び関係者は必読すべき内容だ。ただし、著者も断っているように熊本県人と言っても、ほとんどは旧白川県(熊本市及び県北)の人々の性格について子細に述べられている。旧八代県、人吉、天草、葦北の方々にはあてはまらない内容となっている。
 『熊本県人』は天神のジュンク堂でも、よか場所に置いてあったことから、熊本ではさらによか場所でもっと広く平積みされているに違いない。