女性に優しくなれそうな小説・・・唯川恵「とける、とろける」
今日と明日は、西鉄グランドホテルで「第12回福岡産業デザイン賞」応募賞品展示会が開催されている。
我が社も応募していることから、西鉄グランドホテルの会場やその周辺で、日がな一日、過ごすことになった。
といっても、一日中、展示会にいるほど我慢強くはない。すぐ近くの新天町商店街にある「積文館」という本屋と喫茶店で3時間余り過ごしてしまった。
時間潰しに何と、
新潮文庫の新刊!唯川恵『とける、とろける』(平成22年11月1日発行)を購入。今日は、唯川恵という50歳代の熟女が描く短編にはまり込んでしまった。単純に考えれば、いやらしい短編集だが、罪悪感はほとんどない。読み終えた後、むしろ心が洗われ素直な気分になったような気がした。いつまで続くか分からないが、女性に優しくなれそうな小説ではないかと思った。
この気分をうまく表現できないが「解説」に、こんなことが書いてあった。
唯川恵、という稀代のストーリーテラーが紡ぐこの短編集『とける、とろける』には、性を扱う小説が持つべき最適な温度、読者との距離感、物語の最後まで保たれているべき品、そのすべてが含まれている。一言で言えば、エロティックな小説が内包すべき「心・技・体」、そのバランスが絶妙なのだ。
登場人物のほとんどは、今朝、通勤電車の席で隣り合ったような、マンションのエントランスですれ違ったような、特別な印象を持たない、ごく普通の人たち。どの物語も、過剰な緊張感を与えないまま滑らかに始まり、読者を物語の中心へと誘っていく。しかし、突如あらわれる、砂を噛んだようなザリッとした感触を残すシーン。そこで初めて、読者は予想外の物語の深みにはまりこんでしまっていることに気づく。
この短編集を貫くテーマは、どうやら以下のことらしい。
私が、「私」のまま、どこまで行けるのか。それはすべての現代女性が抱える、病と課題でもあるから。
いつものように一過性だと思うが、しばらく女性作家のマイブームが続きそうだ。
なお、唯川先生のサイン会にはけっこう男性が詰めかけるという。桐野夏生と唯川恵!どちらが女王様か?