映画「十三人の刺客」 凄いのは凄いですが・・・

わくわくなひと

2010年10月18日 21:52

 何やってんだかという感じですけど、天神の東宝シネマで「十三人の刺客」を観てきました。
 役所広司主演。刺客のリーダー役です。「狙うは、最強の暴君。世界を揺るがすラスト50分の壮絶な死闘!」と銘打っているだけのエンターテインメントだと思いました。斬り合いというよりか殺戮ですね。稲垣吾郎演じる暴君の女性や子どもに対する残虐さも印象に残りました。殺陣の迫力は往年のスター松方弘樹の表情と動作が一番リアルに感じました。昔の映画のリメイク版ということも関係したのか、館内は白髪の人が多かったようです。

 どこにでもあるような宿場町(村、または廃墟の街)。ここで敵を、いろんな仕掛けをして迎え撃つ。味方よりも多勢の敵がまんまと仕掛けの中に入ってくる。最初は敵が次々とやられていくが多勢に無勢はいかんともし難く、味方も一人二人と倒れていく。とうとう味方は数人となるが、ぎりぎりのところで目的は果たす。がしかし、主人公も傷つき、息絶え絶えになり、若者に味なことを言って帰らぬ人なる。

 この大まかなストーリーは、黒澤明の「七人の侍」、スピルバーグの「プライベイト・ライアン」と同じです。この両者は村または廃墟の街を主人公たちが守るわけですが、「十三人の刺客」は先回りして待ち伏せして事に及ぶところが違うだけです。

 スピルバーグは黒澤から多くのことを学んだと公言していますし、「プライベイト・ライアン」に「七人の侍」を思わせる場面がほかにもかなりあります。例えば、雨が木の葉にぽたっぽたっと落ちてきて、それがやがて夕立のような激しい雨に変わっていくという日本人的な場面もあるほどです。

 大まかなストーリーが似ている3つの映画の中では、「十三人の刺客」が一番リアリティに欠けていたと勝手に感じました。それはなぜだかはっきり分かりません。松方弘樹の演技からは迫力が伝わってきました。この人だけは凄みがありました。しかし、何人にも取り囲まれて、ほんの数秒のうちに何人もの敵をバッサバッサと斬っていくところがどうもしっくりいきませんでした。「七人の侍」では志村喬が雨の中、馬に乗った盗賊を一太刀でバサッと切り倒すシーンがあります。何人も次から次と斬るわけではありません。ほぼ一人ずつ、盗賊を順番に倒していくところに、リアルさを感じました。「プライベイト・ライアン」では、味方の死に様を一人ひとり個性的に描いていました。

 よく分かりません。私が少なくともリアルさを感じるためには、スーパーマンではなく等身大であることが条件かなと思ったりしました。「七人の侍」はモノクロです。少なくともカラーや大音響、爆発物、人の数の多さはリアルさを感じるための条件ではないかも知れないと思ったりしました。