【新聞比較①】ノーベル賞をいかに分かりやすく身近に伝えるか?
昨日7日はノーベル賞受賞の報が日本全国を駆けめぐりました。
朝のワイドショーをみると、「うちの局が一番分かりやすい」と連呼する場面に遭遇しました。マスコミ各社の腕の見せどころとして、ノーベル化学賞という難しいテーマをいかに分かりやすく伝えるかがテーマとなっているのだと感じました。
件のワイドショーを見ても、私の頭は「ほう。そんなんだ」程度しか反応しませんでした。7日付けの熊日新聞を眺めても、写真と記事をサバの目のような感じで見た程度でした。
そして昨日の夜、「西日本はどうか?同じだろう」と、さして期待もせずコンビニで買ってみました。
一面トップはもちろん「ノーベル賞 鈴木氏、根岸氏」「有機化合物の合成法開発」。その次の同じ一面の見出しに釘付けになりました。もちろんノーベル賞ネタですが
「逆転の発想 奏功」「鈴木カップリング 医薬、液晶に応用」です。
「うん。面白そうだ」と、この見出しには食いつきました。化学や技術の話をされても興味はわきませんが、発想法となると、誰でも興味を持つ話です。ど偉い名誉教授に対して親近感がわきました。
医薬品や液晶など幅広い有機化合物の合成に応用されている「鈴木カップリング」。この発見の裏には「欠点を長所に」という鈴木章北海道大学名誉教授の逆転の発想があった。
鈴木氏が有機合成の研究対象に選んだ有機ホウ素化合物は、他の化合物と反応を起こしにくいため、有機合成分野では見向きもされていなかった。鈴木氏は「反応しにくいということは物質的に安定しているということ。研究者にとって扱いやすい長所になる」と発想を転換した。
・・・それから先は難しいので、つまるところ、この有機ホウ素化合物の性質が有機化合物の大量生産への道を開いた。その背景には逆転の発想があったことにいささか感動しました。
当初、鈴木カップリングの成果を発表した論文は高く評価されなかった。しかし、1980年代半ばに欧米で評価が高まり、86年には米企業の賞を受賞。その後、逆輸入のように国内でも評価され始め、89年には日本化学賞を受けた。
このくだりもいいですね。逆転の発想を提示した時点では、その意味するところが何なのか分からないというのが世の常。せっかくのアイデアが潰されることも多いですね。たぶん逆風も堪え忍んで、欧米の人が先に認めてくれた。物語がありそうですね。
何で西日本新聞に一風変わった視点の記事が載ったのか?そこも気になりました。一面に4段見出しという大きな扱いです。まったくの推測ですが、鈴木氏が北海道大学ということは、同じブロック紙の北海道新聞の記者に、ユニークな視点を持った人がいた。その独自の記事が西日本新聞に流れてきて、西日本の編集者も、その記事の価値を認めて1面にもってきた。一人想像してしまいました。ノーベル賞が身近に感じました。
熊日新聞も「いかに分かりやすく身近に伝えるか」では負けてはいませんでした。
今日8日付けの経済面に
「ノーベル化学賞鈴木教授の技術」「チッソ水俣製造所で応用」「液晶材料の化合物量産」という記事が載っていました。
熊本県民にとっては何かと身近なチッソ水俣製造所の話で、熊本の人なら読みたくなる記事だと思いました。