記者クラブ崩壊!情報を独占する組織との200日戦争

わくわくなひと

2010年08月02日 20:34

 以下の分は、「知らなかった」のオンパレードです。「これが事実なら糞だな」(元ライブドア社長の堀江貴文氏)と、私も思います。
上杉隆『記者クラブ崩壊 新聞・テレビとの200日戦争』小学館101新書
東京・品川の「あおい書店」さんが店に陳列してくれなかったら、たぶん知らなかった本です。2010年4月6日初版第1刷。私が購入したのが7月初旬ですから、今ひとつ売れていないのか知れません。新聞やテレビでの紹介もほとんどない新書だと思います。『電子書籍の衝撃』として有名な佐々木俊尚さんの『2011年新聞・テレビの消滅』文春新書と、同じ文脈の本ということで横に並べてあったので買うことになりました。
帯には上杉隆さんの写真が載っており、確かにテレビで見たことがある顔です。しかし、最近はどうもテレビで見かけなくなったようです。
「記者クラブ」。だれでも一度は聞いたことがあると思います。『新聞・テレビ・通信社で構成されるこの「自主的な組織」は、官庁で開かれる記者会見から、フリーランス・ジャーナリストや雑誌、海外メディア、ネットの記者など非記者クラブメディアを排除してきた。それに対し、「記者会見のオープン化」を事実上の政権公約に掲げたのが、2009年9月に誕生した鳩山政権だった。200日前、無血開城によってオープンになるはずだった政府の記者会見だが、記者クラブと官僚たちの悪あがきによって、不健全な「カルテル」状態が維持されている。』。このことについて詳しい経過が本書に書いてあります。
佐々木氏は衆議院公設秘書、ニューヨークタイムズ東京支社取材記者などを経て、フリージャーナリストという肩書きです。この本によると、最近はマスコミにほされて、ほとんどテレビや新聞に出ていないといことでした。
確かに地方自治体を含む大きな官公庁には記者クラブや記者室があって、そこで記者発表が繰り返されています。それに、どこの馬の骨か分からないジャーナリストやレポーターは、仲間に入れてもらえない。それは情報の独占であり、社会にとってよくないことだというのが、この本の主張です。一つには、“どこの馬の骨”だとセキュリティの問題があるらしいということです。しかし、アメリカやヨーロッパ、韓国や中国などはオープンになっているのに、日本だけが記者発表が一部の民間企業、つまり新聞、テレビ、通信社に独占されている。外国ではセキュリティ対策は政府が徹底的に行うらしく、むしろ記者クラブ主催の方がもっと危ないと、この本には書いてあります。「OECD(経済協力開発機構)は、情報を寡占し、非関税の貿易保護政策に当たる閉鎖的な組織として批判し続けている。EU議会も毎年のように「非難決議」を採択」していると書いてあります。そんなこと知りませんでした。黒船が迫ってくる中で、尊王攘夷派と開国派が争っているような印象も受けました。
「記者会見のオープン化」が鳩山政権の公約だったことも知りませんでしたし、上杉さんたちと新聞やテレビとの争いがあっていたことも知りませんでした。今、内閣の記者会見がオープンになっているか知りませんが、この本では岡田外務大臣と亀井金融・郵政改革担当大臣がオープン化を何とか成し遂げたと書いてありました。こういう争いがあったことも知りませんでした。
この本を読んでいると、「知らない、知らなかった」という思いを何度もしてしまいます。誇張もあるのでしょうが、マスコミの人たちのえげつない行為もたくさん書いてあります。「知らないあなたがいけない」という声も聞こえてきそうですが、この本に書いてあることが事実だとしたら、何か恐ろしくなりますね。
10年以上前、元官僚という人から、「今、公務員や官僚の改革にスポットが当たっているが、その次はマスコミの改革だよ。これをしないと、未来の日本はないよ」と言われたことがありました。海外在住歴の長い人でしたので、今から思えば、この本に書いてあることを言っていたのかも知れません。
当たり前と思っていたことが年月を経て、おかしいということになり、改革を迫られる。上杉さんや佐々木さんの主張は、多くの人は知らないと思いますが、いつか閾値に超えることがあるかも知れないと思いました。
その閾値を超えるツールがツイッターかも知れないと思わせる記述も、リアルに書いてあります。ツイッターの伝播力はすごいですね。
へたすると日本は根本的に変わりそうですね。クワバラ!クワバラ!といよりも、おっかなびっくりです。